論文が出版されました!透明な有機マイクロ電極を印刷で作製

村上さんと吉田が執筆した、透明な有機マイクロ電極に関する論文がMechanical Engineering Journalに掲載されました。

Printed all-organic transparent microelectrodes using PEDOT:PSS and PEDOT:PSS/PEGDA hydrogel for neural stimulation and recording, Tatsuya Murakami, Shotaro Yoshida, Mechanical Engineering Journal, 13(5-S2), 26-00193 (2026). [Link]

オープンアクセスなので、どなたでもリンク先から論文をご覧いただけます。

神経細胞の電気信号を調べたり、電気刺激を与えたりする研究には、細胞とやり取りする小さな電極が欠かせません。従来のマイクロ電極には金やプラチナなどの貴金属と複雑な加工工程が使われることが多く、費用が課題でした。また、電極が不透明だと、その上にある細胞を顕微鏡で観察しにくくなります。

本研究では、電気を通す高分子PEDOT:PSSを含むインクを、繰り返し使える型に詰める印刷工程によって、透明な電極と配線を作製しました。さらに、表面を覆う絶縁層に、神経細胞1個ほどの大きさである20 µm × 20 µmの小さな窓を設け、信号をやり取りする場所を限定しました。貴金属を使わず、微細加工の工程を減らせることが特徴です。

もう一つの工夫は、この窓に、水分を含み電気を通すPEDOT:PSS/PEGDAハイドロゲルを加えたことです。窓のくぼみを浅くすることで、気泡が入り込んで電気的な接触を妨げる問題を抑えました。その結果、測定のたびに表面を水になじみやすくする処理を行わなくても、信号計測に適した低いインピーダンス、すなわち交流信号の通りやすさを得られました。

実験では、電極上で培養した神経モデル細胞PC12を顕微鏡で観察でき、細胞の生存も確認しました。また、生理食塩水中で神経活動を模した電気信号を記録し、電圧を加えた際の気泡発生を抑えられることを示しました。ゲルを加えた電極は、洗浄後にも刺激・計測に適した電気的特性を保ちました。

今回は、単一電極の製造法と、培養細胞・モデル信号を用いた基礎特性の検証を行いました。実際の神経活動の計測や、複数の電極を並べたアレイへの展開は今後の課題です。ゲルの形状や密着の安定性をさらに高めることで、神経科学や創薬研究で使いやすい、低コストで透明な計測デバイスにつながることが期待されます。