論文が出版されました!薄く柔らかいゲル電池を開発

柔軟なゲルと炭素繊維の布を組み合わせた電池について、当研究室の論文がMechanical Engineering Journalに掲載されました。

Highly flexible, thin, and stable battery integrating organohydrogel electrolytes and carbon fabric electrodes for soft electronics, Takuto Nakabayashi, Tatsuya Murakami, Arata Okoshi, Shotaro Yoshida, Mechanical Engineering Journal, 13(5-S2), 26-00194 (2026). [Link]

オープンアクセスなので、どなたでもリンク先から論文をご覧いただけます。

皮膚に貼るウェアラブル機器や柔らかいロボットには、動きに合わせて曲がる電源が求められます。水を多く含むハイドロゲルは柔らかい電池材料として有望ですが、曲げたときに材料同士がはがれることや、乾燥して性質が変わることが課題でした。

本研究では、塩濃度の高いゲルと低いゲル、そして正または負のイオンを選んで通すゲルを組み合わせ、塩濃度の差を利用して電圧を生み出す電池を作製しました。5つのゲルを横方向に並べ、両端に柔らかい炭素繊維の布を電極として配置しています。ゲルになる前の液を接着に使い、イオンの通り道を保ちながら、ゲル同士と電極を一体化しました。全体を柔らかいシリコーンで包み、厚さ約3 mmの電池に仕上げています。

さらに、保湿性のあるグリセロールをゲルに加え、水と有機溶媒を含む「オルガノハイドロゲル」にすることで、乾燥への耐性を高めました。作製工程とその後の約2週間の保存を通じた水分保持の評価では、グリセロールを含む試料は初期重量の約87%を維持し、含まない試料の約52%に比べて重量減少を抑えられました。

完成した電池の柔らかさを表すヤング率は約205 kPaで、人の皮膚について報告されている値と同程度でした。また、外部に電流を取り出さない状態で測る開放電圧は、曲げても約0.15 Vを保ちました。ゲルや電極をしっかりつなぎ、柔らかく包む設計によって、薄さと曲げやすさを両立できることを示しています。

電流を取り出した際には電圧低下がみられ、安定して電力を供給するための回路設計が次の課題です。今後は電荷の蓄積と放出を制御する回路との組み合わせや、使用環境・変形に対する耐久性の検証を進める必要があります。今回の材料と構造の工夫は、身体やロボットの動きに沿う柔らかい電源の実現に向けた基盤になると考えています。